ひみつの花園 作・葉月まな (1)   中庭にやってくるアルマ。待ってましたとばかりに物陰から飛び出すロレッタ。 ロレッタ「アルマ!やっぱりここね。今日こそは逃がさないわ」 アルマ 「(ため息)」 ロレッタ「ねえ、どうして無視するの?高等部にあがってからずっと。もう2ヶ月よ」 アルマ 「クラスも寮もわけられたじゃない。授業も被らないんだからしょうがないでしょう」 ロレッタ「そういうレベルの話じゃないもの!」 アルマ 「言いがかりよ」 ロレッタ「この2ヶ月、アルマのクラスへ通ったわ」 アルマ 「そう」 ロレッタ「周りの人から変な目で見られた」 アルマ 「そうでしょうね」 ロレッタ「アルマはどこなのって聞いても誰も教えてくれないの」 アルマ 「友だちいないもの。誰もわたしのこと知らないのよ」 ロレッタ「どうして避けるの?」 アルマ 「避けてないわ」 ロレッタ「避けてるわ」 アルマ 「避けてない」 ロレッタ「避けてる!」 アルマ 「どうでもいいでしょ」 ロレッタ「よくないわ!ねえどうして?」 アルマ 「…ロレッタ。自分のクラスに帰りなさい」 ロレッタ「嫌よ。理由を教えてくれるまでここにいるわ」 アルマ 「いいから、帰りなさい」 ロレッタ「…あなたがあの星の人間でわたしがそうじゃないってことが問題なの?」 アルマ 「そういうわけじゃないわ」 ロレッタ「いいえ、そうね。そんなこと気にしているのね」 アルマ 「違うったら」 ロレッタ「じゃあ、わたしの目を見て」 アルマ 「嫌よ」   アルマ、顔を背ける。ロレッタ、そっとアルマの手を握る。 ロレッタ「アルマの指、細くてとっても綺麗だわ。肌もすべすべしていて気持ちがいい」   ロレッタ、もう片方の手でアルマの頬を撫でる。 ロレッタ「こんなに綺麗なグリーンの瞳、見たことない」 アルマ 「……」 ロレッタ「ね。なにも違わないわ」 アルマ 「全然違うわ」 ロレッタ「わたしたち、長い間一緒に過ごしてきたじゃない」 アルマ 「あなたはそうでも世間はそうじゃない」 ロレッタ「どうして」 アルマ 「いい加減手を離して。もう帰るわ」 ロレッタ「ねえ、どうして。わたしたちは何も違わないわ、同じ人間じゃない」 アルマ 「どうしてそんなことが言えるの。何も知らないフリでもしてるつもり?」 ロレッタ「そんなこと、」 アルマ 「わたしたちには生まれたときから両耳にチップが埋め込まれてる。      絶対的に管理されているし、いつだって自由はないわ。      なにかあればすぐお前がやったんだろうって目を向けられる。      ロレッタも知ってるでしょ?わたしたちは裁判で裁かれない。なにかあればその場で殺される」 ロレッタ「…本当にひどい話だと思ってるわ…」 アルマ 「しょうがないわ。わたしたちには魔力がある。もちろん使うことは禁じられているけれど。      わたしたちは、(つぶやくように)……あなたの何倍も長く生きるのよ」 ロレッタ「え……?」 ルート 「アルマ!いつまで油を売ってるんだ」 アルマ 「ごめんなさい」 ルート 「(ロレッタを睨み)今日はおつとめの日だ。遅刻厳禁って言われただろう」 アルマ 「わかってる。早く行きましょう」 ロレッタ「アルマ」 ルート 「(遮って)悪いけど、僕たち急ぐんだ」 ロレッタ「…わかったわ。大切なおつとめだもの。ごめんなさい」 ルート 「ほら、早く」 アルマ 「また、学校で会いましょう」 ロレッタ「ええ」   二人、去ろうとする。駆け寄るロレッタ。 ロレッタ「アルマ!(抱きしめる)」 アルマ 「っなに?」 ロレッタ「明日もここで、ね!」 アルマ 「!」 ロレッタ「じゃあ、またね」 アルマ 「……うん」   去って行くロレッタの背中を見つめるアルマ。そんなアルマを見て眉をひそめるルート。 ルート 「アルマ」 アルマ 「…うん」 ルート 「(ため息)先帰ってるぞ」 アルマ 「ん」   ルートが去ったのを確認して、そっとポケットに入れられた小さな紙切れに触れる。 (2)   ロレッタ、アルマを待ち伏せしている ルート 「またおまえか」 ロレッタ「あっ……どうも」 ルート 「ストーカー」 ロレッタ「そんなこと!」 ルート 「アルマはここには来ないよ」 ロレッタ「え?」 ルート 「もう帰った」 ロレッタ「そうですか」   間 ルート 「……帰らないのか」 ロレッタ「もう少しだけ待ってみます」 ルート 「アルマはもう帰ったぞ」 ロレッタ「それでも。いいんです」 ルート 「(ため息)いくら待っても無駄だ」 ロレッタ「あなたには関係ないでしょ」 ルート 「もうやめろ」 ロレッタ「なにを」 ルート 「とうとう通知がきた。僕らは楽園に行くんだ」 ロレッタ「楽園?」 ルート 「そう」 ロレッタ「噂は本当なのね…」 ルート 「ああ」 ロレッタ「楽園って、……どこにあるの?」 ルート 「……(なにも言わず立ち去ろうとする)」 ロレッタ「待って」 ルート 「君はなんにもわかっていないよ」 ロレッタ「どこへ行くの?」 ルート 「君が知らないところだよ」 ロレッタ「わたしが知らないところ?」 ルート 「ああ。そこへ行けば僕たちはもうあの星の人間だからって窮屈な思いはしなくたっていいんだ」 ロレッタ「どういうこと?」 ルート 「お前らみたいな奴らがいないんだよ、楽園は。そのために今まで我慢してきたんだ」 ロレッタ「……我慢……」 ルート 「いい加減アルマに構うのをやめろ。迷惑だ」 ロレッタ「それは、あなたが迷惑なんじゃないんですか」 ルート 「は?」 ロレッタ「わからないならいいですけど」 ルート 「はあ」 ロレッタ「あなたの言うことなんて聞きません(立ち上がる)」 ルート 「おい、どこにいくんだ」 ロレッタ「探しに行くんです、アルマを。もう校舎にはいないみたいだから」 (3)   ロレッタの部屋。 アルマ 「……(うんざりした顔で)ロレッタ」 ロレッタ「(強い口調で)アルマ、答えて」 アルマ 「何?」 ロレッタ「わたしになにも言わないでどこか行くつもりなの?」 アルマ 「なに言ってるの?妄想にしちゃあ行きすぎよ」 ロレッタ「真面目に聞いてるの」 アルマ 「根も葉もない話に真面目にとりあえるわけがないじゃない」 ロレッタ「ルートに聞いたわ」 アルマ 「ルートに?」 ロレッタ「苛々しながら話してくれたわ。楽園に行くんだって」 アルマ 「!」 ロレッタ「そこに行けばもう我慢なんてしなくていいんだって」 アルマ 「あのバカ……」 ロレッタ「アルマもそうなの?やっぱりここにいるのは窮屈なの?」 アルマ 「…快適とはいえないわね」 ロレッタ「そう、よね。じゃあ楽園に行くのは二人にとってはいいこと、なんだ…?」 アルマ 「……」 ロレッタ「アルマは楽園がどんなところか本当に知っているの?」 アルマ 「どういうこと?」 ロレッタ「……いいえ。なんでもない」 アルマ 「……」 ロレッタ「もう、全然会えなくなってしまうの?たまにでも帰って来たりしないの?」 アルマ 「しないわ」 ロレッタ「どうして?」 アルマ 「そういう規則だからよ」 ロレッタ「どうしてそんな規則なんかあるの」 アルマ 「…あなたはいつもどうしてどうしてって言うわね」 ロレッタ「わからないことだらけなんだもの。飲み込めないことがたくさんあるの」 アルマ 「そう」 ロレッタ「アルマはきっと、わたしのことバカだと思ってるんだろうけど、いろいろ考えてはいるのよ。      わたしなんかが一生懸命考えたってどうしようもないことばかりだけれど」 アルマ 「……そんなこと思ったことないわ」 アルマ 「あなたが考えてるのはきっと、わたしのためでしょう?」 ロレッタ「え?」 アルマ 「わたしの思い違いじゃなければ、だけど」 ロレッタ「え、ええ」 アルマ 「もうやめて」 ロレッタ「え?」 アルマ 「わたしはもうじきいなくなる。もう二度とここには戻ってこない。それでいいのよ」 ロレッタ「そう…」 アルマ 「わたしたちは楽園で本当の地獄を見るの」 ロレッタ「え、でもルートは」 アルマ 「ルートは何も知らないの」 ロレッタ「……」 アルマ 「わたしたちに幸せなんてこないのよ。このために生かされてきたんだから」 ロレッタ「……アルマはなにかを知っているの」 アルマ 「それは言えない」 ロレッタ「どうして」 アルマ 「これはわたしの問題だから」 ロレッタ「そうやって仲間外れにする」 アルマ 「そういうことじゃない」 ロレッタ「どうして?最近隠し事ばかり」 アルマ 「そういう年なのよ。わたしたちも」 ロレッタ「年?」 アルマ 「いつまでも子供のままでいられるわけないでしょ」 ロレッタ「それは、そうだけど……」   不満そうなロレッタと彼女を見つめるアルマ。少しの間。 アルマ 「……最後にあなたに会いたかった」 ロレッタ「アルマ……?」 アルマ 「(そっとロレッタに口づける)」   ロレッタ、意識を失う。 アルマ 「ごめんね。わたしのことは忘れて」   ロレッタの体をそっと抱きかかえ、ベッドに横たえる。   左薬指の華奢なシルバーリングを外し、眠っているロレッタの薬指にはめる。   ロレッタの細い指にはリングはすこし大きいようだ。 アルマ 「さようなら、ロレッタ。また…」   その瞳はかすかに潤んでいるようにも見える。月の光がアルマを照らす。 アルマ 「また、会えるかしら……」   アルマは深く息を吐き、部屋をあとにした。 (4) ルート 「おかえり、アルマ」 アルマ 「ルート」 ルート 「あ、」      アルマに一歩近づき、眉をひそめるルート。 ルート 「魔力を使ったね?」 アルマ 「いいえ」 ルート 「鼻は良いんだ。僕のことは騙せないよ」 アルマ 「(ため息)離れて」 ルート 「プライベートで魔力を使うのは禁じられているはずだけど?」 アルマ 「今更優等生気取り?」 ルート 「(にっこりとほほ笑み)…不機嫌だね」 アルマ 「ルート」 ルート 「なんだい?」 アルマ 「ロレッタに喋ったわね」 ルート 「君はまだあんな奴と関わってるの?やめとけって何度も言ったはずだ。彼女は僕らの敵だぞ」 アルマ 「(遮り)あなたに指図されたくない」 ルート 「ああそう。相変わらず気が強いね君は」 アルマ 「楽園のことを告げる必要はなかった」 ルート 「黙って去るつもりだったの?」 アルマ 「もちろんよ」 ルート 「へえ、そうなんだ。じゃあとんだお節介だったか。悪かったね」 アルマ 「なにを企んでいるの?」 ルート 「別になにも」 アルマ 「あなたは機密事項を簡単に漏らすような人じゃない」 ルート 「信頼されてるようで」 アルマ 「事実を述べただけよ」 ルート 「褒められてるのか?」 アルマ 「最低限の常識を持ってるとは思ってた」 ルート 「へえ」   ルートは黙り込み、アルマを見つめる。 アルマ 「なに」 ルート 「どうしてあいつなんだ」 アルマ 「なにが」 ルート 「好きなんだろう」 アルマ 「ただの幼なじみよ」 ルート 「それにしては随分ご執心だ」 アルマ 「あなたが変な目で見てるからでしょう。ただの友人よ」 ルート 「いいや、そんなことはない。少なくとも君のほうは」 アルマ 「否定しても意味がなさそうね。そうやってすぐ決めつける」 ルート 「僕は間違えることがないからね」 アルマ 「大した自信ね」 ルート 「……鬱陶しかったんだよ」 アルマ 「え?」 ルート 「なにを言っても次の日にはケロリとしてるからさ」 アルマ 「彼女は関係ないわ」 ルート 「ああ」 アルマ 「何に腹を立てているの。わたし本当にわからないのよ」 ルート 「こんなことを話している場合か?」 アルマ 「こんなこと?」 ルート 「楽園入りが近いんだ」 アルマ 「ルート、そのことなんだけど――」 ルート 「なんだ、今更怖いのか?」 アルマ 「(少し考えて)…そうじゃないけど」 ルート 「アルマ」 アルマ 「ん?」 ルート 「逃げ出そうとか思ってるんじゃないだろうな」 アルマ 「……」 ルート 「そんなことしても、俺たちはしっかり管理されてるんだ。すぐに見つかるのがオチだぞ」 アルマ 「わかってるわよ、そのくらい。何年生きてると思ってんの」 ルート 「ならいい。唯一の同期なんだ。死んだら寂しいだろ」 アルマ 「そうね」 ルート 「じゃあ、僕は部屋に戻るよ」 アルマ 「待って、ロレッタにどこまで――」 ルート 「(遮る)僕は忙しいんだ。この話は今度な」 アルマ 「今度って」 ルート 「向こうへ行けば時間はいくらでもあるだろう。いいか、くれぐれも逃げたりするなよ」 アルマ 「あ、ちょっと!」   足早に去って行くルートの背中を見てため息をつくアルマ。 アルマ 「…わたしにできることなんか、なにもないんだ」    (5) ロレッタ「アルマ!」   後ろから現れたロレッタ。アルマの目を手で覆う。 アルマ 「?」 ロレッタ「だーれだ!」 アルマ 「ああ、ロレッタ」 ロレッタ「うん。…大丈夫?」 アルマ 「うん。慣れっこよ」 ロレッタ「慣れるなんて、そんなことないわ」 アルマ 「そうかな」 ロレッタ「悲しいことは何回繰り返しても悲しいわよ」 アルマ 「そうなの?」 ロレッタ「(アルマを抱きしめる)」 アルマ 「どうしたの」 ロレッタ「…アルマ、泣かないなあと思って」 アルマ 「泣いたってしょうがないでしょ」 ロレッタ「そういう問題じゃないの。悲しいから泣くんでしょ」 アルマ 「よくわかんない。そういうの」 ロレッタ「そっか……」 アルマ 「…ごめんね」 ロレッタ「じゃあ、わたしが代わりに泣くよ。いっぱい泣く!」 アルマ 「代わりとかあるの?」 ロレッタ「わかんないけど」 アルマ 「なにそれ。変なの」 ロレッタ「ふふ、好きだよ、アルマ」 アルマ 「なに。わたしも好きだよ」 ロレッタ「ほんとに?」 アルマ 「うん」 ロレッタ「ほんとのほんとのほんと?」 アルマ 「ほんとだよ」 ロレッタ「じゃあ、ずっと一緒にいてくれる?」 アルマ 「うん、ずっと一緒にいるよ」 (6) アルマM「……楽園。なんて都合のいい言葉だろう。そんなものがわたしたちにあるはずがなかった。      区別され管理され生きてきたわたしたちは、はじめから兵器として生を持たされていた」   ルートが現れる。額にはうっすらと汗が浮かんでいる。 ルート 「アルマ」 アルマ 「…どうしたの、そんな顔して」 ルート 「楽園に行かないって、本人から嘆願書が来たと、」 アルマ 「そうよ」 ルート 「どういうことだ」 アルマ 「わたしには向かないわ。だから、ここに残るの」 ルート 「ここに残ってどうするつもりだ」 アルマ 「……」 ルート 「知っているだろう。楽園へ行けるのは一握り。それ以外は、」 アルマ 「部品回収のために、破棄される」 ルート 「ああ」 アルマ 「(穏やかな笑みを浮かべて)知ってるわ。当たり前じゃない」 ルート 「……僕たちの今まではなんだったんだ。このために今までやってきたんじゃなかったのか」 アルマ 「(微笑む)」 ルート 「あの女か?」 アルマ 「え?」 ルート 「あんな女一人のために、今までを捨てるのか?」 アルマ 「(目を大きく見開き、動揺を隠すように一呼吸おいて)どういうこと」 ルート 「あの世間知らず女のことだ」 アルマ 「もしかしてだけど、ロレッタのこと?」 ルート 「ああ。好きなんだろう」 アルマ 「はあ?」 ルート 「アルマがあの女に執着しているのは周知の事実だ」 アルマ 「やめて」 ルート 「この間の……禁じられた魔術の香りがした」 アルマ 「!」 ルート 「なにをしたのか知らないが、あの女と会ったんだろう」 アルマ 「そうよ。だから楽園行きも断った。もう廃棄される個体の履歴なんて誰も調べやしないわ」 ルート 「…何をしたんだ」 アルマ 「(微笑み)…向こうに行っても頑張ってね。ルートならきっと生き残れるわ」 ルート 「僕は、なんだかんだアルマと行くんだと思ってた。ずっと」 アルマ 「同期だものね」 ルート 「そういう、いや、それもあるけど…なんか、ね」 アルマ 「(何かに気づき、ルートから顔を背ける)」 ルート 「僕にかけてくれたらよかったのに」 アルマ 「え?」 ルート 「消したんだろう。彼女の中から、自分の記憶だけ」 アルマ 「……ルートはきっと、わたしのこと忘れるよ。向こうに行ったら、きちんと」 ルート 「どうかな」 アルマ 「一緒に行けなくてごめん」 ルート 「謝るなよ。実感するから」 アルマ 「うん」 ルート 「ずっと辛かったよ、僕は」 アルマ 「わたしは、今も辛いよ。でも忘れられるほうが辛いから、ね」 ルート 「ああ」 アルマ 「またどこかで」 ルート 「そうだな。違った形でもいい、また巡り合えることを祈ってる」 アルマ 「ありがとう」   ルートがそっとアルマの頭を撫で、そのまま去る。   アルマはハッとした顔をして、その背中を見つめる。 (6)   どこか霞がかった視界。どこかぼんやりとした顔のアルマがひとり中庭にいる。 ロレッタ「アルマ!」   後ろから現れたロレッタ。アルマの目を手で覆う。 アルマ 「?」 ロレッタ「だーれだ!」 アルマ 「(被って)ロレッタ」 ロレッタ「もう!はやいわよ!」   頬を膨らませながらアルマの隣へ立つロレッタ。 アルマ 「ロレッタくらいしか来ないもの、ここ」 ロレッタ「確かに、いつも貸切状態だものね」 アルマ 「そうね」 ロレッタ「まるで秘密の花園みたい」 アルマ 「ふふ、なにそれ。ロマンチック」 ロレッタ「えっ?そうかなあ?」 アルマ 「うん。相変わらずね」 ロレッタ「アルマはよくひとりでいるのね」 アルマ 「そのほうが楽なのよ」 ロレッタ「さみしくないの?」 アルマ 「全然」 ロレッタ「わたしはアルマがいないとさみしいのになあ」 アルマ 「ええ?」 ロレッタ「アルマがそう思ってくれないのもなんだかさみしい」 アルマ 「ロレッタはさみしいをたくさん抱えてるのね」 ロレッタ「アルマにだけだよ。アルマがいるからだもの」 アルマ 「…相変わらずね」 ロレッタ「ふふ、照れちゃうな」 アルマ 「そうやって屈託なく、いつも愛をくれるんだ。本当にいとしい人」      一瞬、固くなるアルマ。一度深く息を吸って。 アルマ 「うん。まあそういうところも、」 ロレッタ「そういうところも?」 アルマ 「すき……だけどね」      少し言いよどむアルマ。 ロレッタ「わたしも、アルマのこと大好き!」   無邪気にアルマに抱きつくロレッタ。そっと抱きしめ返すアルマ。   アルマの頬には涙が一筋流れた。   アルマの左手薬指のシルバーリングが日の光を受けキラリと輝く。 アルマ 「ロレッタ」 ロレッタ「うん?」 アルマ 「今度は一緒にいようね」   あたたかな日差しがふたりを包む。 inserted by FC2 system