こっちを向いて。 作・葉月まな   鍵が開く音がして、ドアが開く。一樹、振り向かずに。 一樹  おかえり。   少しの間。返事が返ってこず、思わずノートパソコンから顔を上げる一樹。 一樹  隆くん?   隆俊、それには答えずに一樹の隣に腰を下ろす。気まずい沈黙。   スマホから顔を上げず沈黙を貫く隆俊を横目で見つめる一樹。 一樹  どうしたの。   気にしてない風を装い、論文を書き進める一樹。   沈黙。やがて耐え切れずに、パソコンをパタンと閉じて向き合う。 一樹  隆くんってば。 隆俊  わかんねぇの? 一樹  え、なにが? 隆俊  わかんねぇんならいい。 一樹  ・・・昨日のことなら、ごめん。 隆俊  ごめんって(鼻で笑う) 一樹  謝ったよ。 隆俊  謝ればいいと思ってんの?一樹のそういうところがだめなんだよ。 一樹  え、ごめん。でも謝るしかできないじゃん。 隆俊  大体さ、何? 一樹  え? 隆俊  一樹ちょっと感じてなかった? 一樹  いや、そんなことあるわけ、 隆俊  ちょっと目うるってしてたじゃん。 一樹  してない、 隆俊  俺ちゃんと見てたよ。 一樹  してないってば!話聞いてよ。 隆俊  一樹はああいうのが好きなわけ?飲み会のノリでキスしちゃう馬鹿みたいなやつ? 一樹  もう・・・ 隆俊  金髪だし、ダメージジーンズとか履いちゃってチャッラい感じだし、 一樹  (小さくため息) 隆俊  確かに顔はちょっと整ってるかもしれないけど、 一樹  違うってば!   目を合わせない隆俊の肩をぐっと掴み、無理矢理自分のほうを向かせる。 一樹  ちゃんと聞いてよ。僕が好きなのは隆くんだよ。 隆俊  そうやって一樹はすぐ嘘つくから嫌い。 一樹  嘘じゃないってば!何度も言ってるじゃん。受け入れてくれないのは、   一樹、はっとして口をつぐむ。隆俊、感情的になっているため一樹の変化に気づかない。 隆俊  嘘だ、そういう嘘がほしいんじゃない! 一樹  じゃあどうしたら嘘じゃないってわかってくれるの? 隆俊  は? 一樹  どうしたら嘘じゃないってわかってくれるのって聞いてるの! 隆俊  どうしたらって・・・ 一樹  僕は隆くんが納得するならなんだってやるよ。だからどうして欲しいのか教えてよ。 隆俊  ・・・そんなの、自分で考えろよ。俺に聞く時点で考えること放棄してんじゃん。愛がない。 一樹  ・・・・・・わかった。   肩におかれた手を離す一樹。一呼吸置いて、ぐっと隆俊を押し倒す一樹。    隆俊  は?なに、 一樹  いいから!自分で考えろって言ったじゃん。 隆俊  おまえ、何するつも―― 一樹  (強引にキス) 隆俊  んっ、あ、んんっ(いきなりのキスに若干の抵抗をする) 一樹  (執拗に何度もキスする。段々と激しくなっていく)   回数を重ねる度に隆俊の抵抗が弱くなっていく。   一樹の頬も段々と紅潮してゆく。 一樹  ん、ふぅ・・・     隆俊  っは、はあっ、はあっ・・・・・・   少しの沈黙。 一樹  ・・・隆くん。 隆俊  んっ・・・?   いつもとは違い、落ち着いた少し冷たい目をした一樹を見て、思わずドキッとする隆俊。   体の力が抜けきった隆俊を少しの間見つめ、すっと彼のズボンのチャックに手をかける。    一樹  そのまま、見てて。   隆俊の下着を勢いよく下げる一樹。 一樹  ・・・もう大きくなってる。すごい・・・ 隆俊  や、なにをッ、 一樹  (恍惚とした表情で陰茎に手を添え)隆くんのここ、すごい・・・ 隆俊  バカッ 一樹  ・・・かわいい。   満足げに微笑むと、思い切り亀頭にかぶりつく一樹。 隆俊  ああっ 一樹  (じゅるじゅる)んっ、ん、んむ、ん、 隆俊  なに、あっ、いきな、あっ、り、 一樹  (一樹、咥えたまま)ん、もう、ちゃんと、見て、ってば・・・! 隆俊  あっ、それ、や、ば、ああっ、うっ、あっあああっ、一樹っ、 一樹  (隆俊を一瞥し、より一層激しく愛撫する)んむ、んっ、んんっ、んっ 隆俊  ああっ、だ、め、だって、あっあっ、ああっ 一樹  (咥えたまま)んふっ、んっ、たかくんの、バカ・・・ん、んっ 隆俊  わっ、あ、っかたっ、ああっ、も、わかっ、あ、かず・・・!   陰茎を一度口から離し、それでもなお手で激しく上下に擦る一樹。 一樹  隆くんはわかってない。なんにもわかってない。僕の気持ちなんか、いつも1こも、ぜんっぜんわかってない!     僕が昨日、どんな気持ちで狩野先輩とキスしたか・・・! 隆俊  あっ、わか、ったから、ああっ、や、やめ・・・! 一樹  アイツが、隆くんのことウブそうだって、きっと女知らないよあいつって、     俺らでファーストキスもらってやろうぜって、あの汚い口で言うから・・・!     だから、だったら先に僕に教えて下さいよってけしかけたんだ!僕が!ノリなんかじゃない!     アイツが、隆くんに、キ、キスなんて、触れるだけでも、名前を呼ぶだけでも嫌なのにッ!     それなのにッ、隆くんは僕が本気で、アイツとのキスに・・・   言いながら思わず涙ぐんでしまう一樹。唇を噛み締め必死に耐えるが、陰茎に添えられた手は止まってしまっていた。 一樹  ・・・隆くんが、本気でそんな馬鹿なこと思ったんだったら、僕だって、怒るよ・・・・・・   沈黙。俯いて涙を堪える一樹。 隆俊  一樹。 一樹  た、かく、 隆俊  一樹・・・ッ   その優しい声に、ふっと顔を上げると同時に、隆俊は一樹を強く抱きしめた。 一樹  ・・・え、 隆俊  ごめん、ごめんな、一樹。ごめん。 一樹  ・・・・・・うん。 隆俊  一樹の気持ちはわかったし、嬉しいよ。でも俺だって、俺以外の奴に一樹が触れられるのは耐えられない。 一樹  それは・・・ごめん。 隆俊  俺がどれだけ妬いたかわかる?あんな気持ちはじめてだった。 一樹  でも、俺も――んむっ?!   言いかけた一樹の口に指をつっこみ、驚いた一樹をそのまま押し倒す隆俊。 隆俊  ん、ほらッ! 一樹  ん、む、んぐっ、た、かく、んんっ 隆俊  ほら、舐めて。さっきみたいに舐めろよ。 一樹  んぐっ、んっ、ぐ、んぐ・・・っ   息苦しそうに、でも必死に隆俊の指を愛撫する一樹。 隆俊  (首筋に舌を這わせる)ん・・・ッ、んふぅ、     (そのまま一樹の耳元で)いつまでもやられっぱなしじゃ、いやだし。 一樹  あ、う、耳、だめぇ・・・っ! 隆俊  (そっと耳を食みながら)一樹にも、狩野先輩にも、 一樹  ん、あっ、ああっ、だ、だめえぇッ・・・! 隆俊  (ぱっと耳への愛撫をやめ)嫌なの? 一樹  んっ、あ・・・ 隆俊  じゃあやめる。 一樹  うっ・・・意地悪・・・いやぁ・・・ 隆俊  嫌ならやめるってば。 一樹  ううっ・・・嫌じゃ、な、い・・・   ふっと微笑み、瞬間、一樹の首筋に噛みつく。 隆俊 んむッ 一樹 ぁ、ああッ!!!!   突然の痛みに思わず大きな声を出し、目をうるませる一樹。   隆俊  舌、止まってるよ。ちゃんと舐めて。 一樹  んッ、あ、・・・ごめ、なひゃ、い・・・ああっ! 隆俊  (何度も場所を変え噛みつく)ん、んむッ、はあッ、んッ 一樹  ん、んあッ、あああああッ!!! 隆俊  (変わらず噛み続けながら、段々と下へ下がっていく)あむッ、ん、んんっ、はッ 一樹  た、かく・・・んっ、んう、んううう、う・・・! 隆俊  (腰に歯を立てながら)・・・一樹・・・・・・ 一樹  あっ、あ、ああッ 隆俊  ん、はあッ(口を離し、今度は赤くなった噛み痕に舌を這わせる)んッ・・・ 一樹  あう、あっああっ、あっ、たかく、ああっ   指もそっと抜き、そのまま一樹の頭を撫でる。 隆俊  (今度は徐々に上に舐めていく)んふ、んっ、ん、んむ、 一樹  ああッ!!ああああ、ああッ、そ、んなに、あっあ、や、ぁあ、さしく、し、ない、で・・・ッ! 隆俊  (より優しく舐め上げつつ)んっ、んっ、ん・・・はぁっ、ん・・・ 一樹  あ、あ、ああッ、あッ、あう、あ、あああ! 隆俊  ん、はあっ・・・(優しくキス) 一樹  んっ   ふっと、一樹を見つめて微笑む隆俊。 隆俊  ・・・・・・痛かった? 一樹  い、たかった。でも、 隆俊  でも? 一樹  や、なんでもない。 隆俊  でも? 一樹  言いたくない。 隆俊  でも、なに? 一樹  ・・・もう、隆くんしつこい。 隆俊  知ってる。 一樹  ・・・・・・・・・気持ちよかった。 隆俊  へえ。 一樹  途中から段々、結構、き、気持ちよくって、 隆俊  へえー。 一樹  ・・・・・・もう、やだ。 隆俊  変態だ。 一樹  変態じゃないもん。 隆俊  変態でしょ。 一樹  違うって! 隆俊  痛いのが気持ちいい、は結構だよ。 一樹  う、うるさい。 隆俊  一樹のそういうところ、好きだよ。 一樹  えっ・・・・・・   不意に言われたその甘い言葉に、思わず頬を赤らめる一樹。 隆俊  痛くしてごめん。でも、ちゃんと痕、残したくて。 一樹  あ、 隆俊  俺のもの、みたいな。 一樹  俺の・・・   はっと目が合い、どちらからともなく笑い出す。そのまま優しくキスをする隆俊。 一樹  嬉しい。 隆俊  キス? 一樹  ううん・・・隆くんが、 隆俊  うん。 一樹  僕のこと、ちゃんと好きなんだなって、思えた。 隆俊  へへ。 一樹  隆くんも、ちゃんと僕の好きって気持ちをわかってくれた。 隆俊  うん。 一樹  勇気だして好きって言って、隆くんも好きって言ってくれて、夢みたいだって思ったよ。     でも、なんだかんだキス以上のこともまだしてないし、やっぱり夢だったのかなって     僕の妄想だったのかなって、時々思うことがあって。     だから、こんな形になっちゃったけど、すごく、嬉しかった。 隆俊  一樹・・・・・・ 一樹  すっごいヤな奴だなって思ったし、キスされたときは殺してやりたいって思ったけど、     今回だけは狩野先輩に感謝だね。 隆俊  それでもやっぱりむかつくはむかつくけどね。 一樹  ふふ、そうだね。 inserted by FC2 system